あなたは赤ちゃんの主治医です – 着床期から始まる胎盤ケアの科学 –
新しい命を授かったとき、喜びとともに、体の変化やこれからの過ごし方について、さまざまな思いが心に浮かぶ妊婦さんも多いのではないでしょうか。
この文章は、妊娠初期に母体の中で起きている変化や、赤ちゃんを育てる土台となる体の働きについて、比喩を用いながら、できるだけやさしく分かりやすくお伝えするために書かれたものです。
何ごとも最初が肝心 -冷え性にご注意を-
子宮内の胎児の発育を、きれいな花や果実にたとえてみましょう。
あなたは胎児の種を胎盤という畑に植えたのです。
赤ちゃんの種(胎芽)が畑(胎盤)で立派に育つためには、十分な水と肥料、そして太陽の光が必要です。
太陽が体を温め胎盤(畑)の血流を良くし胎芽を成長させます。
太陽と同じ働きをするのが「睡眠」です。
睡眠を十分にとると血管が開き子宮胎盤に流れる血液が増え立派な畑(胎盤)に育っていくのです。
美味しい果実、きれいな花を咲かせるには、まず畑の手入れが何より大事です。
何事も最初が肝心、それは胎盤(畑)ができはじめる着床時期ほど畑の管理が必要なのです。
妊娠初期はなぜかウトウト眠くなります。
それは卵巣から黄体ホルモンが出て、胎盤(畑)に水・肥料・太陽を与えるためと理解してください。
胎児が順調に発育する為には、胎児に酸素と栄養を届ける胎盤が健康でなければなりません。
その胎盤が順調に発育し、正常に機能するかどうかは、妊婦さんの生活習慣に係っています。
元気な赤ちゃんを産むためには、皆様が、まず正しい食生活習慣、十分な睡眠、適度の運動、快適な環境(温度)が必要であることが分かって頂けると思います。
畑に花の種をまいても管理が悪ければきれいな花は咲きません。
手入れが良ければ枯れる事もなく、10か月できれいな花に成長するのです。
超音波で胎児の畑(胎盤)を観察すると、私には畑の管理が上手かどうかが見えてきます。
最近は高齢出産が増えましたが、畑の管理が良ければ立派な花を咲かせることが出来ます。
たとえ40歳の高齢出産でも、畑の管理が良ければ、30歳の畑(胎盤)に若返りするのです。
20歳代の若い妊婦さんでもタバコを吸ったり睡眠不足をしたりすると、畑の胎盤は逆に高齢化するのです。
最近の赤ちゃんが小さくなった理由は、畑(胎盤)の管理が疎かになっているからだと思います。
約43年間、超音波で胎盤を観察してきた私は、胎児を育てる胎盤には年齢とは別の胎盤年齢があると実感しています。
胎児が元気にすくすく育つには毎日の畑(胎盤)の手入れが重要で、皆様の生活習慣が赤ちゃんに優しいかどうかにかかっているのです。
私の医院で赤ちゃんたちが元気に生まれてくるのは、お母さんが「胎児の主治医は私」の自覚を持って体調管理、生活習慣の改善に全力で取組んでおられるからこそだと感謝しています。
日々の選択が命を育てる
妊娠とは、赤ちゃんが育つための「環境」を母体の中につくり上げていく過程でもあります。
目には見えにくい妊娠初期の体内で起きている変化について、胎児を“種”、胎盤を“畑”にたとえる比喩を用いながら解説しました。
できるだけ具体的に、分かりやすく伝えることを心がけています。
中心となる胎盤は、妊娠初期、とりわけ着床期からの生活習慣によって大きく左右されます。
十分な睡眠、体を冷やさないこと、バランスの取れた食事、穏やかな日常――それら一つひとつが胎盤という“畑”を耕し、赤ちゃんへ酸素と栄養を届ける力を育てていきます。
年齢に関わらず、胎盤は日々の管理によって健やかにも、逆に衰えもします。
だからこそ、妊娠中の母親は「胎児の主治医」であり、自身の体調と生活を整えることが、そのまま赤ちゃんの未来を守る医療行為となるのです。
安産とは偶然に訪れるものではなく、妊娠初期からの意識と行動の積み重ねによって育まれるもの。
そのことを、この文章を通して感じ取っていただければ幸いです。
