周産期医療の見直しと発達障害予防のために
近年、わが国では発達障害を抱えるお子さまの数が著しく増加しております。その原因を巡っては、教育、遺伝、環境といった多角的な観点から研究が進められておりますが、「周産期におけるケアのあり方」という極めて重要な視点については、いまだ十分に議論されているとは言えません。
出生直後に起こりうるチアノーゼ(肺高血圧症→低酸素→心肺停止→医療的ケア児)に加え、低血糖症や重症黄疸といった疾患が、医学的見地からも新生児の脳に深刻な影響を及ぼし、発達障害や後遺症の一因となる可能性があることは、国内外の研究により明らかにされています。
しかしながら、予防医学の観点から「どのようなケアが発達障害の予防に有効であるのか」という体系的な研究は乏しく、現場の医療従事者やご家族に対する情報提供も、決して十分とは言えない状況です。
私は産科医・麻酔科医として、これまで15,000人以上の赤ちゃんの誕生に携わり、出生直後の新生児に関するデータを継続的に収集・研究を続けています。特に2000年以降、低血糖症や重症黄疸が発達障害の増加に繋がる可能性を予見し、周産期医学会等において警鐘を鳴らしてまいりました。
その問題意識の契機となったのが、1989年にWHOおよびユニセフが発表した「母乳育児のための10カ条」です。これは、発展途上国において人工栄養が感染症拡大を招いた教訓に基づく、公衆衛生上の重要な勧告でした。
しかし、この方針が日本のような先進国の医療現場にそのまま適用された結果、新生児への必要な栄養補給が不十分となり、低栄養や脱水症状を呈する事例が見受けられるようになりました。健常に生まれた赤ちゃんであっても「飢餓」に陥るリスクが高まっているのが実情です。
さらに、我が国では「カンガルーケア」(現在ではSTS=早期母子接触と称されます)が急速に普及いたしました。本来、カンガルーケアは医療設備の乏しい発展途上国で、低出生体重児のケアを目的として導入された手法です。それが日本では十分な医学的検討を経ることなく、健常児にも広く適用されてしまいました。
その結果として、体温管理が不十分な中、裸のままの新生児を母親の胸に抱かせることで、赤ちゃんの体温が奪われる、必要な栄養摂取が妨げられるなど、逆効果ともいえる事例が報告されております。
つまり、「完全母乳主義」と「カンガルーケア」が同時に実施されることにより、本来回避可能であったはずの「新生児の飢餓状態」が、全国の病産院において発生しているという深刻な現実があるのです。
私は、これこそが現在の発達障害児急増の根本的要因の一つであると確信しております。この問題に対し一刻も早い周産期医療の見直しが求められており、その一助となるべく「久保田予防医学研究所」を安産の神様をお祀りする御殿(みどの)の地に開学いたしました。
久保田予防医学研究所の使命
本大学では、以下の目標を掲げて取り組んでおります。
- 周産期医療の再評価と科学的改善
- 妊産婦および医療従事者への正確かつ最新の情報提供
- 科学的根拠に基づいた「安全な出産」と「安心できる育児」の普及
未来を担う子どもたちが健やかに育つ社会の実現に向け、今こそ周産期医療の在り方を再構築する時が来ております。
多くの皆さまとともに、正しい知識と予防の力により、新たな医療スタンダードを築き上げてまいりたいと存じます。
今後とも、皆さまの温かいご理解とご支援を心よりお願い申し上げます。
